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OCR技術の選択: ソフトウェア開発者が考慮すべき重要事項

Matt Netkow

2024年3月20日

OCR(光学式文字認識)技術を選ぶ際、開発者は多くのことを考慮しなければなりません。OCRソリューションは何十年も前から存在しているため、標準化されており、どれを使っても問題ないと思いがちです。しかし、この考え方は現実とは程遠いものです。実際には、すべてのOCRが同じように作られているわけではないので、適切なものを選ぶのには一苦労することになります。モデルの種類からAIの提供、価格設定、コミュニティーのサポートに至るまで、多くの要素がプロジェクトに最適なものを決定する上で重要な役割を果たすのです。この記事では、オープンソースモデルの考慮点、LLMの制限、価格設定など、留意すべきポイントを取り上げています。

AI開発者向けの新しいAPIがまもなくリリースされます。

オープンソースのモデル: 費用対効果は高いが、精度は劣る

TesseractやPaddleOCRのようなオープンソースのOCRモデルは、そのアクセスのしやすさと費用対効果の高さから、開発者の間で人気のある選択肢です。しかし、この選択肢にはいくつかの制限があります。

  • 正確性: オープンソースモデルは、商用エンジンに比べて精度が低いことが多いと言わざるを得ません。特に手書きや回転したテキスト、低品質の画像の取り扱いなどがあまり得意ではありません。
  • 複雑な文書のサポート: これらのモデルは、複雑な文書、表、グラフを効果的に扱えない可能性があります。
  • 継続的な最適化: 継続的な最適化: OSSモデルの改良はコミュニティの意向次第です。メンテナンス担当者は入れ替わりが激しく、担当者の優先順位があなたのプロジェクトのニーズと異なることはよくあることです。独自開発の企業は、長年の実践経験と洗練された技術を活かし、継続的な最適化によって優位性を維持しています。

オープンソースのOCRモデルは、POC(概念実証)や単純なドキュメントの処理には使えるかもしれませんが、高品質で信頼できる精度が必要な場合は不向きです。

LLMはOCRの代わりとなることができるか? そう簡単にはいかない現状

GPT-4.5のようなLLMや、その他の汎用AIモデルは、文書処理にますます使われるようになっています。ウェブUIやチャットボットを通じて文書をアップロードすることで、OCR能力を素早くテストできることは魅力的です。しかし、この選択肢にも課題は残ります。

  • ハルシネーション(幻覚): LLMはテキストの重要な部分を省略したり、事実ではない内容を生成したり、テキストの座標情報を出力できなかったりすることがよくあります。
  • 矛盾:フォーマットや表の抽出が一貫せず、堅牢なOCR作業には信頼性に欠ける場合があります。結果自体にも一貫性がなく、同じ文書を10回処理しても10通りの結果が出る可能性があります。
  • スピードとコスト: LLMベースの抽出は、計算コストが高いため、時間がかかり高価になる可能性があります。

大規模言語モデル(LLM)の不正確さが予測できないため、ビジネスプロセスの自動化が妨げられてしまいます。その結果、開発者はエラーや例外をひたすら拾い続ける羽目になり、まるで「LLMのモグラたたき」をしているような状態になります。下流プロセスでは、見逃された問題があれば、ユーザーは手作業で修正しなければなりません。これでは、そもそもOCRソリューションを導入した意味がなくなってしまいます。

価格設定: 安物買いの銭失い

OCRソリューションを選ぶ際、価格は重要なポイントですが、単に安ければいいというわけではありません。

  • サポートと信頼性: 特にビジネスの重要なプロセスに関わる場合、有料のソリューションを選ぶ大きなメリットは、サポートやアドバイス、そしてサービスレベル保証(SLA)をすぐに受けられる点です。
  • 費用対効果:予想外の出費を避けながら、必要に応じてスケールアップできるよう、低コストで使った分だけ支払う料金モデルのソリューションを選ぶのがいいでしょう。
  • 無料トライアルや無料プラン(フリーミアム): 多くの商用OCRソリューションは無料トライアルや無料プラン(フリーミアム)を用意しており、開発者が導入前に機能を試せるようになっています。
  • 能力比較:多くのソリューション、特にMicrosoftやAWSのような大手クラウド企業のサービスは、一見すると安く見えますが、それはOCR機能を必要な分だけ課金する仕組み(アラカルト式)だからです。すべて込みの料金モデルと比較すれば、安く見えるのは当然です! 価格に関するページを隅々までじっくりと確認しましょう。

OCRソリューションを選ぶ際は、十分な試用期間があり、必要な文書処理容量が確保されていて、使った分だけ支払う料金モデルが採用されているものを選びましょう。

開発者向けのサポートとコミュニティ

優れた製品だけでは不十分で、充実したサポートと活発なコミュニティも欠かせません。

  • 製品資料とSDK: OCRソリューションには、スムーズな導入や最適化のために、詳しい製品資料やSDK、テスト用のサンドボックス環境が用意されているか確認しましょう。
  • ユーザー同士が積極的に関わるコミュニティ: 必要なときに頼れる、活発で親しみやすい開発者コミュニティがあるOCRソリューションを選びましょう。優れたコミュニティからは、意見交換や専門的なアドバイスが得られ、OCRの導入や活用をさらに強化することができます。

OCRの世界は見た目以上に複雑です。一見すると解決済みの問題に思えても、実際の現場で求められる精度や信頼性、高度な機能が必要になると話は別です。プロジェクトを成功させるためには、企業の信頼性とコミュニティの支えがある強力なソリューションを選びましょう。

ABBYYの開発者向け専用ドキュメントOCR APIの紹介 (近日公開)

最適なOCRソリューションを選ぶには、これらの要素をバランスよく考慮し、自分たちのニーズに合ったものを見極めることが大切です。もしあなたのプロジェクトがビジネスにとって重要であれば、ABBYYの新しいDocument AIプラットフォームを検討する価値があります。

ABBYYが間もなく発表するDocument AI APIは、開発者に優しい設計が施された専用OCRサービスであり、AIを活用した業務プロセス自動化ワークフローにスムーズに組み込めるよう作られています。非定型のビジネス文書を、高い精度と信頼性で効率的に定型JSONへ変換し、貴社のビジネスソリューションやアプリケーションの成功を力強く後押しします。

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Matt Netkow ABBYY

Matt Netkow

ABBYY、デベロッパーリレーション責任者

マット・ネットコウ(Matt Netkow)は、ABBYYのデベロッパーリレーション部門の責任者として、OCRおよびIDP分野の開発者コミュニティをサポートしています。彼は、ソフトウェアエンジニアリング、デベロッパーリレーション、プロダクトマネジメントで培った経験を活かし、開発者が目標を達成できるよう、指導と支援を行っています。仕事以外では、自転車に乗ったり、ウェイトトレーニングを楽しんだり、美味しいクラフトビールを味わったりするのが好きで、何よりも家族と過ごす時間を大切にしています。

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